探知機欲しい
冬になると物が欲しくなる。寒くて引き籠もり体質になるので諸々の欲求は「物欲」という形で現れるのである。今回の事の発端は元旦の新聞広告であった。ホームセンターの初売り広告にGPSレーダー探知機5000円というのがあったのだ。いきなりモノの良し悪しはわからないがとりあえずGPSレーダーが5000円は安いのである。
初めてお聞きするひとのためにGPSレーダー探知機とは何かご説明したい。そもそもレーダー探知機とは警察が行う速度取り締まり・・・いわゆるネズミ捕りをドライバーに事前に知らせてくれる機械である。ネズミ捕りの際に使われるスピードガンから発せられるレーダー電波をキャッチして警報を出す機械なのである。また国道や高速道路に設置される固定式の速度取り締まり装置(オービスといわれる)にも同様に有効な装置なのであったが、警察もバカではなくレーダー探知機に対する対抗措置としてオービスに関しては電波式ではなく道路に速度照査装置を埋め込むタイプに変更していった。したがってオービスの探知はレーダー探知機では出来なくなってしまったのだ。しかしメーカーも負けてはいなかった。今度は宇宙空間に浮かぶ位置測定衛星(GPS)を使い自車の位置を正確に割り出すことによってレーダー探知機に事前に登録されたオービスの位置情報と照合してオービスへの接近をドライバーに警告するという「GPSレーダー探知機」というものを売り出したのだ。
発売当初は大変高価なモノだったのだが昨今の電気製品の価格低下の例に漏れず近年安くなってきたのではあるが5000円とは安すぎるのだ。初売りは2日からで2日はちょうど新年の挨拶でしな子実家へ行く用事があり、そのホームセンターもしな子実家への通りがけなのだ。ホームセンターは9時開店であったが9時半頃そのお店に立ち寄ったところ、すでにお目当てのGPSレーダー探知機は売り切れていた。
そもそも以前からGPSレーダー探知機が欲しかったわけでもなく、しなちく1号には壊れかかったGPS機能なしの旧式レーダー探知機が備わっていたのでそれほど困っていたわけでもなく悔しい買い逃しではなかったはずなのだ。しかし家に帰りネットで買い逃した製品を調べるとその製品は通常14000円程度で販売されている事や最近の製品は私が思っていた以上に機能が優れていることなどが分かりにわかに欲しくなってしまったのだ。こうなると逃した獲物はでかいのだ。私は電気製品を買うとき並々ならぬこだわりをみせる。今回も逃してしまった商品については仕方がないが買うとしたらどんな製品がよいのかネットを駆使して各社製品を比較し相場価格も調べ、さらには「2ちゃんねる掲示板」で個別製品やメーカーの評判等も調べて機種選別を行った。
レーダー探知機という製品について各社どの製品についても言えることなのだが不満があった。イルミネーションが派手でガキっぽいのである。だがそれは仕方がない。そもそもレーダー探知機なんて10代や20代前半の飛ばし屋のあんちゃんがくっつけるもので40過ぎたおとっつあんの車に付けるものではないのだ。いい歳こいて買うのが恥ずかしいくらいの商品なのだ。
しかし私の物欲には年齢制限などないのだ。欲しくなったら哺乳瓶から仏壇まで何でも買いたくなってしまうのだ。そんな中で某C.T社より見た目大変地味で事前の設定等も不要なお手軽製品が販売されているのを発見した。機能的には全く不満がなくむしろ不要な機能が削除されていて良いくらいなのだ。最近の製品は不要な機能が多すぎるのだ。
ネットで相場価格を調べると底値は13800円。買い逃した5000円と比べるとえらく高い買い物になってしまうようなのだ。しかし星の数ほどあるレーダー探知機の中からこの製品が5000円くらいでセールされる可能性などゼロに等しく、欲しければ13800円以上の出費を覚悟しなければならないということなのだ。とりあえずはこの製品が私の欲しいモノリストにインプットされたのである。
それから数日経った1月6日、用あって近所の別のホームセンターに立ち寄ったときにレーダー探知機のショーケースを覗いてみると例のC.T社の製品が置いてあるのだ。100種類を超えるような各社同類製品の中から5〜6機種しか扱っていないようなこんな長野の田舎ホームセンターにこんな地味な製品がセレクトされて置いてあるのだ。お値段は14800円。ネットの底値より1000円ほど高いが、この手の製品は初期故障等が多く(経験的に)ネットで購入するより近所の店舗で購入した方が交換や修理が楽なのだ。そう考えるとこの1000円程度の差額は保険みたいなもので納得の出来る金額である。しかしこの店には展示品の他に販売在庫がなかった。
そしてその2日後、朝からホームセンターめぐりが催行された。近隣にホームセンターは多数あり、しかも例のC.T社製品を扱っていた店と同系列の店舗も何店舗かあるのだ。仕入れのことなどを考えると近隣の系列店舗の扱い商品は同じ物が多いと考えるのが妥当だろう。
今日は扱い店舗と販売価格をリサーチすることを目的にして購入はネット等でもう少し情報を仕入れて勉強してからにしようという算段である。この日はホームセンター4店舗、カーショップ、大型電気店それぞれ1店舗、計6店舗を巡回する予定である。
車の後部座席には朝から母子で険悪な雰囲気であったちび子を乗せて母は家に残し母子を分離させて出発した。早速2店舗目に寄ったカーショップで同製品を発見したがお値段が16800円であった。これではいくら何でもお話にならない。
その後の巡回では前述系列ホームセンターも含めて見あたらない。後部座席にくくりつけられたちび子もご機嫌ななめになってきたので5店舗目に立ち寄った大型電気店でちび子にジュースを購入してやり機嫌を取った。しかしこのジュースが後ほど悲劇を生むとはこの時思いもしなかった。
ここの大型電気店においても多数のレーダー探知機を扱っていたがお目当ての製品はなく最後の6店舗目前述系列ホームセンター「川中島店」へ向かった。
そこにはお目当ての製品が置いてあったのだが期間限定1月14日まで通常価格14800円より1000円引きの13800円というお値段で販売されていたのだ。こっ、これは『買い』ではないか・・しかしお金が足りるかどうか分からない。元々購入の予定ではなかったのだから。財布を開けて全財産を調べてみると13730円なのだ。70円足りない。あの時、ジュースを買わなければ・・・悔しさがこみあげた。
車のフロアマットの下などにはよく小銭が落ちているものである。またトランクの奥などにも転がっていることがよくあるのだ。なんせ以前乗っていたレガシイでは買い換えで下取りに出す前に掃除していたら車内から10万円出てきたのだ。北海道旅行の時に緊急用にとトランクの奥深くに隠しておいた現金を忘れてしまっていたのだ。
そんな経験則からも店舗駐車場で車内を引っ掻き回して探したがそういうときに限ってお金は出てこないのである。
「場所柄誰か知人でもいないか」とも思い周囲を見渡しても見たがそんなに都合良く知人がいるわけもなかった。
こうなったら弱そうな中学生を捕まえて『金貸してくれんかの〜』とか言って(カツアゲともいう)調達しようかとも考えたが、意外とその中学生が強くて逆に所持金13730円を巻き上げられても悲しいし、仮にうまく調達できたとしても買い物を終えて店を出たら駐車場にその中学生と警察官が一緒に待っていたりしたら70円で人生棒に振りかねないのでちょっとリスキーな方法なのでこれもやめておいた。
そのまま帰るべきか・・・期間限定1月14日までだが商品の性格上売り切れるということはないであろう・・が、後日出直しということになればガソリン代もバカにならない。なんせリッター150円オーバーですから。なんのための1000円引きなのか分からない。
さらにこのまま帰るようなことがあればアタマの中はこのことでいっぱいになるであろうからこのあとの乗務に差し支えが出る恐れがある。乗務中雑念は厳禁なのだ。これは列車の安全確保のためにも購入する必要があるのだ。
そしてある名案が思いついたのである。ここ、川中島といえば妻しな子の実家の近所である。しな子の実家に行って70円貸してもらえばよいのである。私は恥を忍んで行動に移した。
実家に行くと私とちび子の2人でいきなり訪れたので「なんだなんだ」と義姉と義母が出てきた。そこで一言「すみませんが100円貸していただけないでしょうか・・」。小学生レベルの情けなさである。母上も娘の行く末にかなりの不安を感じたのではないだろうか。40過ぎの男が嫁の実家に100円借りに出向いたのだからその心中は察して余りあるものなのだがこの際列車運行の安全を確保するためには恥などと言っている場合ではないのだ。
こうして無事に100円を借り受け再度来店をして購入にこぎ着けるのであった。帰宅して昼食を摂ると直ちに取り付け作業である。きれいに配線も回して上手に取り付けたのであったが、近所にオービスなどは無く、その性能を確かめることが出来ないのはなんとも悲しい気分なのであった。
早くどこか遠くに出かけたい。春はまだなのか?雪深い信州の寒村(ってわけじゃないけど)より春を待ちわびる日々が続きそうなのであった。