マイブーム

 カブトエビってご存知だろうか。天然記念物のカブトガニじゃなくってカブトエビである。形はカブトガニとほとんど同じなのだが大きさが2〜3センチしかない。カブトガニは砂浜の海辺にいるがカブトエビは田んぼにいる。
 カブトガニと同じく2億年の昔からほとんど姿を変えていない太古の生物なのだ。
 春田植えの頃、田んぼに水が張られるといきなり現れて、我が物顔で泳ぎ回っているのだが、それから1ヶ月も経つと急に姿を消してしまう。不思議な生き物である。
 その秘密は卵にある。彼らの寿命は1ヶ月ぐらいしかないのだ。その1ヶ月の間に卵を産んで短い生涯を終わるのだが、産み落とされた卵は「耐久卵」といわれ、一旦完全に乾燥し、再度数日温かい水に浸からないと孵化しないのだ。
 彼らの産んだ卵は秋に田んぼの水が抜かれ冬の間完全に乾燥し、そして翌年の春に再度水が張られると一斉に孵化し、田んぼに姿を見せるのだ。
 その卵は乾燥したまま条件がそろうまで何年でも孵化の時を待ち続けるのだ。

 そんなカブトエビ、毎年、信濃千曲川通信社の前にある田んぼで見かけていたのだが、職場にいる物好きな同僚が飼育をはじめ、ハマッてしまった。飼い始めると可愛いらしい。
 そんな彼の話を聞いてついつい数匹捕まえて小さな水槽を買って(280円)飼い始めたのだが、たしかになかなか奥が深くて楽しい。
 まず餌である。基本的に草食らしいということが判ったので、キュウリをあげてみたが見向きもしない。そこで近所のどぶからミズゴケを取って、あげてみると大喜びでパクパク食べる。同僚氏が言うに共食いをすることもあるらしいので、動物性タンパク質も必要と判断して、乾燥アカムシをあげるとこれもよく食べる。
 水槽には田んぼの土が入れられたので水はいつも濁っていて、鑑賞には不適であった。そんな理由もあって毎日水を換えた。汲み置きの水をいつも用意しておいた。その甲斐あって、日ごとに水は澄んでいった。
 水槽の中で何回か脱皮もしたようだ。小さな水槽には10匹ものカブトエビが棲んでいたからちょっと酸欠気味だったので時々ポンプで空気を送ってやったりもした。飼育を初めて5日。すべてが順調にいっていたので、仲間を2匹増やしてやったのだが、それがいけなかったらしい。
 仲間を増やした翌日、泊まり勤務を終えて家に帰るとすべてのカブトエビが死んでいるのだ。さすがにショックだった。
原因を考えてみると、人口過密〜酸欠〜1匹死亡〜水質急激悪化〜総死・・・ではないかと思われた。たった一晩だったのに水は腐っていた。この時期、一匹でも死ぬとそれが原因で水質が一気に悪化してしまう。可哀想なことをしてしまった。
 さて、今後どーするか?もう飼うのをやめるか、また飼うか。
 カブトエビの時期はもう終わりかかっている。田んぼで捕獲できるのもあと僅かだ。 しかし同じ飼い方をしたのではまた死んでしまう可能性が大きい。しかも繁殖を目的で飼うのであれば土を入れなければならない。そうすると水が濁ってしまう。
 鑑賞を目的で飼うとなると、土の代わりに砂利を入れることになるだろうから繁殖には不向きである。カブトエビは田んぼの土に卵を産み付けるのだ。
 そんな悩みを抱えながら別の用事でホームセンターに行くとポンプ、循環濾過装置、砂利などのセットになった小型水槽キットが2480円で売られていた。大いに迷ったが、妻が「置き水やカブトエビを用意して明日また来れば? 」と提案するので、素直に従うことにした。もう時期が終わりにきているので思い通りにカブトエビが捕獲できるか判らないし、汲み置きの水も用意していないのでたとえ購入しても、すぐには飼育に取りかかれないのだ。
 しかもそれでうまく飼えるという保証はどこにもないのだ。水槽の環境は泥水の田んぼとあまりにも違いすぎるのだ。
 その夜私は水槽を買ってカブトエビを飼う夢を見てしまった。あまりにも思い入れが強すぎて夢に見てしまったのだ。まるで子供のようだが、見てしまったのだからしょうがないのだ。
 ここまで来て後へは退けない。翌日ホームセンターへ水槽を買いに行った。勢い余って2480円のセットじゃなくてもっと大きな4480円のセットを買ってしまった。
 どうなることやら。
顛末は後日別の機会に・・・